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Valentine's Day
――――――――――――1st pattern
暖かな部屋の中で、ソファーに身を預けながらキラは雑誌を読んでいた。
パラパラと、微かに音をさせページをめくる。
そこに、トレーを持ったラクスがやって来た。
「キラ、お茶とお菓子などいかがですか?」
ゆったりとした動作で首を傾げ聞いてくるラクスに、キラはにっこりと笑って頷く。
「うん、もらうよ」
キラは礼を言いつつ、トレーをラクスの手から受け取りテーブルに置いた。
ラクスは膝をおりトレーの上のカップなど紅茶を飲むための一式を並べ出す。
そして最後に、キラの前にケーキを置いた。
そのケーキを見ながらキラは目を瞬かせ首を傾げる。
「これ、チョコレートケーキ?」
「はい、そうですわ」
「ラクスが作ったの?」
「はい」
微笑みながらラクスが頷くと、キラは小さく感嘆の息を漏らす。
「すごいね、美味しそう」
思ったままをキラが素直に言うと、ラクスは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。今日はバレンタインデーですから、キラの為に作りましたの」
両の手のひらを合わせラクスは楽しそうに言う。
しかしその反面、キラは呆けたように目を瞬かせた。
「え……バレンタインデー?」
今日がその日だということを今知ったようで。
キラは
あぁーそっかそっかーバレンタインデーかー………
と何度も何度も頷く。
そんなキラを見ながらラクスはくすくすと笑った。
「あらあら。忘れてらしたのですね」
キラらしいです、とラクスは微笑む。
キラは少しだけ恥ずかしそうに頬を掻き、よしっと姿勢を正した。
ケーキにしっかりと体を向ける。
そして両手を合わせ
「いただきます」
心からの感謝を込めてキラはそう言うと、黙々とケーキを食べ出した。
ラクスは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにケーキを食べるキラを見つめていた。
―――――――――――――2nd pattern
シンは手にした箱を見つめ、ただただ感激していた。
赤い包装紙に金のリボンで可愛らしくラッピングされたその箱は、たった今渡された物で。
今日はバレンタインデーで。
渡してくれたのは今目の前にいるステラで。
今日はバレンタインデーで。
バレンタインデーとは女性が好きな男性に――ある国では男性から女性にらしいが――贈り物をする日で。
シンはステラにもらったわけで。
とにもかくにも、幸せで嬉しすぎることだった。
「ありがとうありがとうありがとう!」
シンは何度も礼を言う。
何度言っても、たりないくらいだった。
異常に喜ぶシンにステラはきょとんと目を瞬く。
「そんなに………うれし……?」
「うんっ!」
即答しつつ、シンは大きく頷く。
ステラは
「そぅ…………」
と、素っ気無い口ぶりで頷き返した。
しかし、その頬はほんのり赤く染まっており。
ステラはステラなりに、喜んでいるらしかった。
紅い瞳を輝かせながら箱に見入るシンを、ステラはちらりと、上目遣いで見上げる。
「………それ、チョコレートなの………」
「うん!」
「……食べてくれる………?」
「うんっ!」
「……じゃ、今……食べて………?」
「うんっ………て今?」
ステラからの要望に、シンは一瞬迷いを見せた。
今すぐ食べるなんて、もったいない!
もっと拝んでから部屋でゆっくり…………
というのがシンの本心だったが、期待に満ちたステラの視線に勝てるはずもなく。
「じゃ、じゃあ開けさせてもらうな」
と、慎重な手つきでリボンをほどき、包装紙に手をかけた。
破かないように、そっと、そっと開けていく。
なんとかどこも破かずに包装紙を取り外し、シンは箱を開いた。
中には、小さなハートの形のチョコレートが数個。
シンが今まで見てきたどのチョコレートよりも、美味しそうに見えた。
「ありがとう、ステラ………」
頬を緩めれるだけ緩めて、シンは微笑んだ。
ステラはこっくりと頷き
「食べて………?」
と首を傾げる。
その意のまま、シンは遠慮がちにチョコレートを一つつまみ、口にほおりこんだ。
口内に、甘い甘いチョコレートが広がる。
ころころと舌で転がし、存分に味わってからゆっくりと飲み込んだ。
一拍置き、シンはほぅと息をつく。
「………おしいし?」
そう尋ねながら、不安そうに見上げてくるステラに、シンは思いっきり笑って見せた。
「もちろんっ!」
偽りなく笑うシンに、ステラは瞳を細め、柔らかな笑顔を浮かべた。
END
‐あとがき‐
急ごしらえのバレンタイン小説でした(爆)
本当はレイルナ・アスカガ・アウメイ・イザシホも入れて6通りの話にしたかったんですけど、時間の関係で断念。
あぁ、駄目管理人(泣)
キララクは果てしなく短く。
シンステはシンが果てしなくアホです。
こんなのでいいのか、バレンタイン小説!!(ヨクナイ)
とりあえず、バレンタインでした。まる。
UP:05.02.14