after self-control
 

子供達は可愛い。
 
皆明るくていい子だ。
 
一緒にいたら楽しい。
 
が。
 
たまに、ほんのたまに、
 
キラは子供達が、お邪魔虫に感じられてしまうのだった。
 
 
 
例えを上げるなら、こんな時に感じられる。
 

「ラクス………」
「キラ………」
 
互いの手を取り合い、互いの瞳を見つめあう。
そしてどちらかともなく、顔を近づけ、唇を………
 
「キラーラクスー!」
「おねえちゃーん、おにいちゃーん」
 
明るく響いた声に、キラとラクスは瞬時に体を離した。
 
ラクスは何事もなかったかのように、駆けて来た男の子と小さな女の子に笑顔を向ける。
 
「どうなさいました?」
「いっしょに遊ぼーぜ!」
「みんなあっちでまってるよー」
 
そう言いながら二人の子供はラクスの手を片手ずつ引っ張った。
ラクスはあらあらと微笑む。
 
「わかりましたわ、ご一緒しましょう」
 
ラクスの了承に、二人は歓声を上げた。ラクスの手をますます強く引っ張る。
 
「早く早く!」
「おにいちゃんもいこー」
 
首を傾げながら誘ってくれる女の子に、キラはすまなさそうに目線を合わせた。
 
「ごめんね、僕はちょっと用事があるから、後から行くよ」
「えー………じゃあ、ぜったいぜったいあとできてね」
「うん」
 
笑ってキラが頷くと、女の子はにこぉっと笑顔になる。
そのやり取りが終わったのを確認し、男の子が元気よく歩き出した。
 
「行こー!」
「はい。ではキラ、また後で」
「ぜったいねー」
 
ぱたぱたと手を振ってきた少女に手を振り返し、キラは三人を見送った。
そして、子供達に両隣をかためられたラクスの背を見つめながら、大きな大きなため息をつく。
 
「また、後で……か」
 
ぽつりと呟き、キラは力なく肩を落とした。
 
 
 

こんな感じで、キラはもう何日もまともにラクスに触れていなかった。
最初の頃は仕方ないことだと自分に言い聞かせ、我慢してきた。
だけど………
 
「さすがに……もう限界、かも………」
 
自室の――マルキオに与えられた部屋だが――机につっぷし、キラは情けない声を上げた。
今はもう深夜なので寝間着であるTシャツと簡素なズボン姿である彼は、先程からずっと同じことをと言っている。
 
限界限界限界。
 
こればかりだ。
相当きているらしい。
 
「でもなぁ……下手なところ見られたら子供達に説明するのに困るし……母さんに知られたらそれこそ終わりだし………」
 
キラはぶつぶつとぼやく。
今は一人だからいいが、はたから見れば怪しいこと極まりない。
大きく深い息を吐きながら、キラは触れたくてたまらない少女の名を口にした。
 
「ラクス…………」
「はい、なんでしょう」
 
返ってくるはずのない返事が、返ってきた。
 
あぁ、僕、幻聴がきこえるくらい、やばいんだ………
……………
 
「ってそんなわけない!」
 
自分の考えを自分で否定して、キラは勢いよく立ちあがった。
 
「ラク………ふぐっ!」
 
声を張り上げたキラは言いきる前に、ばちんっとその口をふさがれる。
目の前で口をふさいだ手の持ち主が、もう片方の手の人差し指を、口元に当てている姿が目に入ってきた。
 
「静かに。子供達が起きてしまいますわ」
 
くすくすと笑いながら、ラクスが言う。
やはりあの返事は幻聴ではなかった、とキラは少し安堵した。自分はそこまできていないと。
しかし、次の瞬間にははっと我に返り、口をふさぐ手を取る。
 
「ラクス、どうして僕の部屋に?」
 
極力声を潜ませ、キラは今一番の疑問を口にした。
 
こんな時間に、男の部屋に。
しかも、寝間着にガウンを羽織っただけの姿で!
 
キラは混乱を必死に抑える。
そんなキラに対し、ラクスはにっこりと笑った。
 
「キラとお話したかったのですわ」
「へ?」
 
呆けた声を上げるキラに、ラクスはますます笑顔を深める。
 
「キラとは、昼間全然お話できませんでしょう?ですから、子供達が寝てしまった後なら……と」
 
つまり。
ラクスなりにキラと同じく――彼のように邪ではないが――子供達の為に二人の時間が取れないことを気にしていた、ということだ。
 
キラはそれが純粋に嬉しかった。
ラクスはいつも平気そうにしていたから、自分のことはどうでもいいのかと不安になっていたのだ。
だから、嬉しかった。
 
しかし、だ。
 
「この時間にふ、二人きりになるのは……ちょっと……」
 
まずいんじゃ。
と言いよどむキラに、ラクスはきょとんとした。
 
「何がまずいのですか?」
「――――っ」
 
キラは脱力感にも似た眩暈に襲われる。
 
限界だと言っているそばからこんな。
こんな拷問のような!
僕はどれほど我慢すれば……………どれほど……………
 

悶々とそんなことを思っていたキラはふいに、表情を消した。
 

なんで我慢しなくちゃいけないんだ?
 
問い掛ける。
 
ラクスは、僕のことを好きでいてくれてるんだし、何より、お邪魔虫は夢の中。
 
理由をつける。
 
我慢しなくてもいいじゃないか。
 

答えが出た。
 
 
 
にやりと、キラの口元が歪みを帯びた。
紫の瞳に、怪しい光が備わった。
 
そのまま、小首を傾げてキラを待つラクスに目を向ける。
 
キラはにっこりと笑い、ラクスを手招いた。
ラクスは何にも気付かず、それに従う。
 
「どうされました?」
「キスしよう」
「え………っ!」
 
何を言われたか理解する前に、ラクスは唇をふさがれていた。
足が宙に浮きそうになる程抱きすくめられる。
驚きに身を固めるラクスだが、次第に力を抜いて、キラに身を委ねようとした。
 
しかし。
 
「んっ………ふ、ぅっ!」
 
予想外の激しい口付け。
それから与えられる息苦しさに、ラクスは眉を歪める。
キラの胸を押して離れようとするが、彼はそれを許さない。
もっと深く、ラクスを貪った。
 
たまに、やっと離れたかと思いラクスが酸素を補給すると、キラはすかさずその唇をふさいだ。
 

そうして、どのくらいたっただろうか。
 
キラがラクスを解放すると、ラクスは腰に力が入りきらず、その場に崩れた。
彼女は酸素不足と恥ずかしさで顔を真っ赤に染めている。
 
「キ、ラ……」
 
キラを見上げると、彼は紫の瞳を細めた。
 
「あのさ、ラクス」
「え………」
「僕、まだ満たされてないんだよ」
「………え」
 
ラクスの背筋に、何か冷たいものが走る。
にこにこ笑いのキラは、へたり込むラクスを抱き上げた。
 
「キ……!」
「僕、我慢しすぎたみたいだから、覚悟してね」
「こ……子供達が……!」
「いるけど、寝てるから関係ないよ。ラクスができるだけ声を小さくしてくれたらね」
「………っ!」
 
硬直するラクスに、キラは小さく舌をだした。
 

我慢はすればするほど、反動は大きいものなんだよ。
 

そう心の中で呟き、キラは自分の腕の中で固まったラクスを、ベッドまで運んでいった――――――
 

END
 

‐あとがき‐
 
久しぶりの黒キララクです。1年近くぶり。
 
黒キラ=えろキラ。
 
という方式が成り立ってますね。もぅ。
 
微エロっ!なんっか微エロっ!
毎回のことですが黒キララクは書いてて楽しい反面恥ずかしい!
こんなの顔見知りに知られたら終わりだ!ってくらい恥ずかしい!!
 
でももっとエロいの書きたいとか思ってる自分がいる。(ちょっと待て女子高生!)
いや、ここは(一応)健全サイトなんで裏には走りませんよ。多分………(ぇ)
 
やっぱキラは攻めだよなー、としみじみ思いました。
 
UP:04.12.19
ブラウザを閉じてください。