大股で通路を行くアウルに引きずられるように、メイリンはおぼつかない足取りで歩いていく。
 
「ね、ねぇ、待って!こんなことしても………!」
 
捕虜を勝手に部屋から出して艦内を歩かせるなど、この少年は何を考えているんだろうか。
大丈夫なんだろうか。
 
そんなメイリンの心配にも似た不安を、アウルは笑って吹き飛ばした。
 
「大丈夫だって。ちゃんとネオに許可もらってるんだからさ」
 
……ネオって誰だろう………
 
メイリンは気になったが、それを口にするのはやめた。
それよりも、周りの目が気になったからだ。
 
通路ですれ違う艦の乗組員は、皆メイリンを見て驚愕をあらわにしている。
 

やだ……恐いよ………!
 

自分に向けられる目に、メイリンは体を固くした。
そしてその怯えは、メイリンの手を掴むアウルにも伝わったようで、アウルは足を止めずに口を開く。
 
「恐がるなって。あいつら、あんたに何かしようなんて度胸ないから」
「え………」
「あいつら、自分がコーディネイターより身体能力が低いからって、あんたみたいな女にもびびってるんだぜ」
 
バカみてぇ、と毒づくアウルに、メイリンは目を瞬かせた。
 
「あなた……同じ地球軍なのに………」
「同じじゃないね、あんな奴ら」
「………」
「ボクと同じなのは、あんまり認めたくないけど、同じパイロットの二人だけだ」
「あなた以外の……もしかして、ガイアとカオスの……?」
「あれ、ボクがアビスのパイロットって言ったっけ?」
 
質問を質問で返してきたアウルに、メイリンは戸惑いつつも頷く。
 
「だって……あなたなんでしょう……わたしをここに、連れてきたの………」
 
あの時、施設で遭遇した時、この少年の背後にはアビスがあり、パイロットスーツも着ていた。
 
そういえば………
 
「どうして、わたしを連れてきたの………?」
 
どうして、気絶させただけで、殺さなかったのか。
 
メイリンは今更ながらに不思議になった。
しかし、怪訝そうにするメイリンに対し、アウルは特になんでもないように答える。
 
「別に。ネオが人質が必要だとか何とか言ってたから、ちょうどいいかなって」
「………そうなんだ」
 
何を期待していたんだろう。
敵の命を助けるなんて、人質にする為に決まっているではないか。
 
そんな当たり前のことを忘れていた自分を、メイリンは恥じた。
アウルはうつむいてしまったメイリンに、冷めた目を向ける。
 
「なに?ボクが善意であんたを助けたと思ってた?そんなわけないだろ。ボクたちは敵だ」
 
きっぱりと言い切ったアウルに、メイリンは胸がずきりと痛むのを感じた。
 
敵。
そんなことは百も承知だ。
 
だけど、だけどただ………
 
「……ったから………」
「あん?」
 
ぽつりと呟かれたメイリンの言葉を聞き取れず、アウルは足を止め、訝し気に振り返った。
そして、目を丸くする。
 
「…………泣いてんの?」
 
うつむいたメイリンの頬に流れるものがあった。
ついに泣いてしまったメイリンに、先程まではからかい調だったアウルも、呆気にとられ言葉を失う。
 
「お、おい………」
「…わたしは……ただ嬉しかったんだもん……」
 
嗚咽を混じらせながら、メイリンは言った。
アウルは言葉の意味が掴めず、まだ声をだせない。
そんなアウルには構わずメイリンは続けた。
 
「誰も、知ってる人……いないのに……わたし……コーディネイターなのに……あなた、優しかったから………」
「や、さしい……?ボクが………?」
 
初めて言われた言葉に、アウルは驚愕する。
メイリンはこくんと頷いた。
 
「……外、出してくれたし……一緒に、いてくれるし……優しいよ……」
「いや……あんたをここに連れてきたの、ボクだぜ?」
 
普通憎んでも、優しいとかいう誉め言葉は向けないものではないか。
 
おかしいだろ、というアウルに、メイリンは勢いづけて顔を上げた。
 
「でもっ………でも嬉しかったんだもんっ………!」
 
怒鳴るようにそう言って、メイリンは声をあげて泣き出した。
 
「な、あ……おい……!」
 
子供のようになきじゃくるメイリンに、アウルは慌てた。
 
「な、泣くなよ……なぁ………」
 
必死に泣き止ませようとするが、メイリンにその気配はない。
 
「………あぁもぅ、仕方ないなぁ!」
 
そう吐き捨て、アウルはもう一度メイリンの手を握った。
そして引っ張り、歩き出す。
 
「行くぞ!」
「………ど、どこに………?」
 
嗚咽を漏らしながらも、メイリンは尋ねた。
アウルはずんずんと歩きながら答える。
 
「あんたと同じくらいの年の女が、この艦にいんだよ。そいつだったら、あんたもまだ恐くないだろ」
 
その言葉に、メイリンは涙を止め、赤くなった目を瞬かせた。
 
「女の子が……いるの?」
「そうだって言ってるだろう。黙ってついてくればいいんだよ」
 
ぶっきらぼうにそう言うアウルに、メイリンはまた目を瞬かせた。
そしてしばらく悩み、おずおずと声を上げる。
 
「あの………」
「なんだよ、黙れって………」
「名前、なんていうの………?」
「……………アウル」
 
アウル・ニーダ。
 
小さな声だったが、きちんと聞き取ったメイリンは口を動かし、その名を呟いた。
少しだけ、口元を緩める。
 
「………わたし、メイリン。メイリン・ホーク」
「……あっそ………メイリン、ね」
「うん………そうだよ」
 
頷き、メイリンは淡く、微笑んだ。
 
 
 

あなたは敵。
敵。
 
だけど…………
 

ありがとう。
 
本当に、ありがとう………アウル。
 

END
 
‐あとがき‐
 
アウメイ。初・アウメイ。
 
マイナーのどこが悪い!?(ぇ、逆ギレ!?)
 

なぜかこんなに長々と書いてしまいました……(汗)
こここまで読んで下さった方は本当にお優しい………ありがとうございます!
 
このお話は、うちと相互をして頂いてる、『四葉』の蒼藤なつみ様のアウメイイラストを元に執筆。
しかも無断で(ぇ)
すいません!なつみさん!!だってあまりにツボをつかれたイラストだったんですもん!!
……すいませんー!
 
あぁ、アウメイ推奨CPに完全に入っちゃっいましたよ〜ふへへへへ(きもっ)
 
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